4月中旬より匿名醸造家チーム(phantom brewery )が酒造りをスタートしました。

愛知を代表する蔵元から選抜された20名以上の匿名醸造家達を4チームに分けて今回は酒造りをしてきます。
酒造り通して技術・情報交流、自分たちの腕試しが混じり合った酒造りという、
ある意味「威信」をかけて造る前代未聞なプロジェクトなので、
内容も少しマニアックですが、お付き合いください。


ファントムプロジェクトの詳細はこちら

Dチーム「洗米」です。









※写真で見てわかるとおり、洗米前と洗米後の吸水によって色もテクスチャーにも変化が見られます。

洗米は酒造りにとても重要な要素です。
精米されたお米はデリケートで洗米を適当に行ってしまうと 米が割れたり傷んだりします。


割れるとどうなるか?

酒造りにはアルコール発酵に必ず必要な「糖」が必要です。
その糖になるのが「米」と「麹菌」をくっつけた「米麹(ブドウ糖)」です。
日本酒の原料には必ずラベルにも米麴という表記がありますね。
ワインで言うと、この米麹=葡萄といったポジジョンだと私は思っております。
葡萄はもともとが糖なのですが、米は皆さんもご存知デンプンなので、
これを糖に変える作業(糖化)が必要であり、
これこそ世界の醸造家が注目している技術「製麹(せいぎく)」でもあります。
この良い米麹を造る事が酒造りにとって非常に重要で、
蒸したお米に種麹(通称:もやし)をふりかけていくのですが、
この麹菌が、蒸したお米の中心にしっかりと入っていく為に、
外側を固く乾燥させ、中に程よく水分が残っている状態(外硬内軟性)にしていきます。
その為に湿度調整や温度調整をしていくわけですが、
洗米で米が割れたり傷ついてしまうと、
米を浸す作業(浸漬)の際に、 米が水を含む「吸水率」が変わったり様々な影響を与えます。
吸水率がバラバラのお米を蒸したり乾燥させたりすると 結局最後には均等にならないわけで…
これを極限まで丁寧にやろうということで、 写真でもみてわかる通り、
大量のお米を丁寧に手で優しく洗っております。 これを何度も何度も大切に洗米して、浸漬して、蒸しに入っていきます。
製麹(せいぎく)と言われる 米に種麹をかける姿はよく酒造りにおいては写真でも見かけますが、
こういった当たり前で、一見見過ごされそうな工程である「洗米」も 実はとても重要なファクターなのです。
私は原料である米を作る作業も大切ですが、 日本酒造りにおいては、いい原料だけではなく
その土地や気候にあった風土に合わせた「適切な原料処理」がさらに重要だと感じます。
その適切な原料処理の為には、
その土地を知り、その原料の特性を知り、気候に合わせた臨機応変さが問われます。
人間の知恵と自然が生み出す変化を融合させたものが「日本酒」なのです。
そしてそこに匿名醸造家たちの技術や知識がぶつかり合うことで
こんな時はこうすればいいのでは?など様々な意見がぶつかり合うことが既に
未来の天才を生むスタートだと思ってます。